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WORKS

猫テラスのある平屋


うちの60周年記念誌を作って納品していただいたのが2016年12月。それから1カ月半後に「中古住宅を買おうと思うから、リフォームをお願いできますか」とお電話をいただいて、びっくりしました。

ですよねー。私自身、まさかの展開でした(笑)。

記念誌の取材の途中で「住まいに対する考え方が変わった。やっぱり健康な家に住まなきゃダメです」と言われていたけれど、そんなに急とは(笑)。

記念誌の制作を依頼されたとき、古い借家に住んで3年目でした。5LDK家賃3万円の超お得物件で、日当たりが悪く、湿気が多く、家も傾いていたけど、どこが壊れても大家さんが直してくれる。自分の家じゃないから細かいところまで気張らなくていい。気楽でいいやーと納得していました。

ワンちゃん猫ちゃんが複数飼っていると、住める借家は少ないですもんね。

最大の課題です(笑)。それと、建築家に依頼して新築した家に20年以上住んだ経験から「持ち家はメンテナンスが大変」「年を取ると、家に求めるものが変わってくる」と痛感していました。「持ち家」に対して期待しなくなってたんですよね。

考え方が変わったのはなぜですか。

森の木を伐りだすところから手掛ける永井さんの家づくりと、取材や撮影で訪問したお施主さんがみんな幸せそうに家を語ることに感動しました。みなさん本当に自分の家が好きで、満足して住み続けている。仕事柄、建築関係の取材もたくさん経験してきましたが、ここまで会う人会う人にハッピーオーラを感じた経験はなくて(笑)。単純に「いいなぁ」「うらやましいなぁ」「私もこんなふうに感じながら暮らしたい」と思ったんです。

そう言ってリフォームを依頼していただいて、とても光栄でした。「がっかりされたら申し訳ない」と臨みました(笑)。

購入する前、一緒に物件を見てもらいましたよね。築30年の物件だったので、「大丈夫だと思いますよ」と言われて不安が解消しました。プランや工事の途中も、私の思い付きや細かい注文に丁寧に対応してくださって、「何でも相談できる」ってお施主さんが言ってたのはこれだーと(笑)。

床下環境も良かったし、構造的にしっかりした造りの平屋でした。

一番のヒットは、屋根裏部屋への出入り口をリビング側に収納階段として設けてもらったことです。北側納戸に付いていたハシゴだと、使いにくくて危ない。相談したらその場で永井さんみずから和室の天井裏をのぞいて「ドアを付け替えらそうだから、リビング側に階段を付けましょう!」と。

そうしたら水原さんが目を輝かせて「本棚兼用にしたい」「猫の遊び穴も抜いてほしい」と。2人の合作ですよね。猫の遊び穴を大きく抜きすぎて、気に入ってもらえなかったのは残念でしたが(笑)。

どう住みたいかをヒアリングするうちに、仕事や食と同様に水原さんの暮らしの真ん中にペットの存在が大きくあることに気づきました。

一番の中心かもしれません(笑)。

ペットと暮らす本も貸していただき、犬猫の気持ちを考えるようになって、ご主人の帰りを待つ間心地よく過ごせる空間としてリビングテラスが生まれました。室内は壁、天井のクロスを珪藻土にすることを強くお勧めしました。ペットが居ればこそ空気をきれいにする珪藻土壁は必須です。

珪藻土にしたのは大正解でした。犬1匹・猫4匹の暮らしですが、わが家に来た人は口をそろえて「臭わない!」と驚かれます。そして、猫テラス! 室内飼いの夢! 大傑作です(笑)。大工さんに「犬小屋を作ったことはありますが、猫小屋は初めてです」と苦笑いされつつスタート(笑)。猫用ステップをここにこんなふうに付けてほしいとか、SNSでこの亀甲網を見つけたから取り寄せてほしいとか、細かい注文が多くて呆れませんでしたか。

いえいえ、わが家でも犬を飼ってきましたが、ペットと暮らす人の想いや絆をここまで間近で感じたのは初めての経験でしたし、ピノくん(犬)やノンちゃん(猫)たちと会えるので現場に行くのが楽しみでしたよ(笑)。

家で仕事と好きなこととペットとの暮らしを両立させたい。インテリアなど好きなものに囲まれて暮らしたい。ごちゃごちゃさせないで、こざっぱりきれいに暮らしたい。ドアを引き戸に替えたり、キッチンカウンターの形状やサイズにこだわったり、手持ちの調理器具や家電、これから買いたいものまできっちり測ってお伝えしたり、好きな食器やかご類を並べる棚のサイズを指定したり。

この年代になると、自分の性格や志向、ライフスタイルが分かるので、譲れないことやこだわりが多くなる。欲張りな私に根気よく付き合ってくださって感謝しています。

平屋で、リビング、キッチンを生活の中心に、人とペットの物語を紡ぐように打ち合わせを重ね、お施主さんの笑顔にたどり着いたときの喜び。そのプロセスは永井のリフォームの財産になっています。猫さんたちに気に入ってもらえて、テラスを建てた大工も喜んでいます(笑)。