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おばあちゃんの家に孫が住む

お父さんが私の同級生で、ご長男が次女の同級生、お母さんと私がお友達、奥様は事務所スタッフ。
繋がりの多い関係でのスタートでした。

会社に入ってから、色んな施主様の家づくりの様子を見ることはありましたが、実際に自分が施主という立場になると、どんな家にしようか、ワクワクすると同時にたくさん迷うこともありました。

自分も生まれ育ったおばあちゃんの家を大事に残したい。
息子たちをこの家に住ませたい、というご相談でした。
そして、孫夫婦もおばあちゃんの家が好きだという事。

リフォームの前に家の整理をした時に、おばあちゃんとの懐かしい話をたくさん聞いて、そんな楽しい思い出が詰まった家に住めたらいいなと思っていました。

まず耐震。築100年近いとの事。
安全を確保しながら、思い出深い家をどう残していこうかと考えました。
乾いた土地で 地盤の状態は良好でしたが、防湿シートを敷き土間コンクリートを打って、石場建の足元を補強します。
それに、藁屋根にトタン葺きですから、スキマだらけです。
冷暖房は効きませんし、動物が入ってくるのでは、怖いし不衛生ですよね。
天井裏には、ヤマトと言って沢山の石や土が乗っていて、昔、カイコを飼っていた時代の天井でした。
これを落とすと、物凄い重量の土と石が出ましたよ。
軽くなった天井は、高さを利用して二重天井にしようと決めました。断熱材の効果を最大限に上げたかったので。

古い家だったので、隙間風が通って冬場は寒かったと聞いていたので、そこが不安でした。古民家リフォームの経験と知識があるからこそ、良さを生かしながら、改善するべき点を的確に判断してもらえたので、とても安心感がありました。

『田の字型』の典型的な古民家です。牛を飼っていた部屋も有りましたよ。その時代を象徴するように、流行したリフォームや増築が施された家でした。
田の字型の家は、大黒柱を中心に頑丈に組まれています。
壁が無くとも柱と梁で立つ家ですが、これからはそうはいきません。
鴨居も兼ねた桁に、更に 柱を建て 間仕切り壁を設けて、筋交いで補強します。傷んだ柱・桁・土台も替えました。

これから先何十年も住んでいく家なので、耐震性や構造の安全性をしっかりと高めてもらえて良かったです。また、元々の構造は残しつつ、台所やお風呂の位置など生活導線を踏まえて、住みやすいような間取りに変更しましょうと提案してもらえたので、心地よく生活できています。

昔の家の玄関土間によくある、箱段と言って玄関の土間には和室より一段低い段が付けられていて、その段板はケヤキでした。大事に外して加工場で保管して、最初からの希望であった、丸窓の下の飾り台に使いました。

リフォームしたことで、内装はかなり新しい雰囲気に変わりました。それでも、おばあちゃんと過ごした昔の家の一部が今も こうして残っているのを見ると、ホッとしますし、家に来られた方にはいつも紹介しています。

解体する前に有った、古い水屋やタンスをリフォームして使いたいと、家具屋(にいのや)さんに依頼されていたので、寸法や使い勝手を調整しました。

大きくて立派な水屋だったので、食器や調理器具などがたくさん収納できています。炊飯器などの調理家電を置くスペースが欲しかったので、コンセントの位置等もあわせて工事してもらいました。完成した水屋を入れる時は5人がかりで運びましたが、寸法もピッタリ入って台所にとても馴染んでいます。

この家に有った建具も、経年変化でかなり傷んでいましたが、山水の模様の入ったすりガラスや、格子の舞良戸などは、風情があり、その家にきっと馴染むだろうと思い、直して使いました。

今では手に入らないような細工の入った貴重な建具を残して使っていただいたおかげで、古い雰囲気を残した部屋になったと思います。ソファで寛いでいる時に、ふと眺めると、風景と障子の山の模様が合わさっていて趣がありますね。

お仕事としては、私的には一番楽しく好きな仕事ですね。
古いものを壊して捨てるのは簡単です。
ですが、そのひとつ一つに作った過程が見えるものは、返って捨てがたいものです。職人の手によるものと、その素材は、現代の建築では及ばない事が多いです。
工事中毎日のようにセルフビルドで隣の長屋を修理している同級生(お父さん)の姿に、家への思い入れの深さを感じながら、みんな仕事をさせて頂きました。

初めて自分の家や暮らしについて考える家づくりだったので、なかなか難しかったですが、色んな提案をしてもらう中で少しずつ道筋が見えてきて、最後には楽しい家づくりになったと思います。また現場を見に行った時には、改めて永井建設の真剣に家づくりに取り組む姿勢を知ることができました。暮らし始めてからますます、木の家ならではの、無垢床の質感の心地よさや、空気のきれいさを実感しています。
思い出が詰まったこの家で、新たな思い出を刻んでいくことが楽しみです。