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WORKS

100年の時をいとおしむ

家具工房Kitobito(キトビト)さんのご紹介でお電話をいただいたのが、ご縁の始まりでした。

はい。家具の相談に行ったら、「家具より工務店を決めるのが先だ」と永井さんを紹介されました。長らく離れて住んでいましたが、母が一人暮らしになったのを機に、先祖が代々守ってきた古い実家に帰ることを決心しました。リフォームに関しては、とにかく家の中が暗く、寒いので、今の暮らしに合うように現代的に直せばいいかなという程度の認識でした。

現地にご一緒したら、かなり古い古民家でした。そのとき、大手建設会社の一級建築士の方が作られたリフォームプランの図面を渡されて、「鉄骨で補強をして、内装は全面クロス、新建材の建具を使いたい」とのご希望をお聞きしました。

私も一級建築士で、建築についての知識と経験があり、尊敬する先輩に設計してもらったプランに自信を持っていました。ただし、伝統工法の木造をどうすればいいのか分からなかったので、耐震補強のため、知識のある工務店に頼みたいとは考えていたんです。

構造を確認するために屋根裏に入ったら、見たこともない大径木の地松の梁が使われていて、材の希少性と職人の技に感動しました。そして、これを隠してしまったままではもったいない、この古い家の価値を今によみがえらせるリフォームができたらと。伝統工法に携わってきた者として強く感じたんです。奥様は当初から「建具の古いガラスを残して使ってほしい」と言われていて、古いものがお好きなんだなぁと感じていました。あとは、主人にどう説明すればこの古い家の価値をお伝えできるだろうかと。ずっと考え続けて、建築予算についてやりとりの間に、古民家に映えるリフォームを提案させていただいたんです。伝統工法の家にふさわしく、職人の技と古い建具を使いませんか、と。

古い建具の良さとか、梁を見せる内装の納まり具合とか、会うたびに説明されて、最後には「もう任せるよ」と (笑)。もちろん、永井建設さんの、構造体に対する深い理解や確かな技術への信頼があればこそでした。

ありがとうございます。まず足回りからしっかり基礎工事を施す必要があったので、柱石の周囲をコンクリートでしっかりと固定し、安全性を担保。柱と柱の間に筋交いを加えるなど、耐震補強にも努めました。寒さ対策としては、調湿機能を持った羊毛断熱材ウールブレスを使用。格段に快適になったと思います。

予算内で仕様の変更を提案してもらいながら工事が進められたことに感謝しています。お仕事ぶりを見て、安心してお任せできると確信したので、当初の予定にはなかった門と塀の相談もさせてもらいました。

うちの会長に見てもらい、「総ケヤキで造られた上等の門なので、大事にしてほしい」とお伝えしたうえで、家相の一番良いところに門を移転し、古民家に似合う塀を設計して提案。納得いただいて施工しました。100年以上を経た価値ある古民家が、現代の暮らしに合わせて再生され、さらに住み継がれていくお手伝いができたこと、たいへん光栄に思っています。